「僕は南場智子氏が死ぬほど好きです。」
僕の中で最大限のリスペクト抱いているのは、ソクラテスでもアリストテレスでもデカルトでもなく、南場智子氏です。
古本屋で、100円で叩き売りされていた南場氏の著作「不格好経営」を暇つぶしに読んだことがそのきっかけです。
人間味とユーモアに溢れた、スーパーおばちゃんの哲学と魅力について記録します。
「いつも私は去年の自分が恥ずかしい。」-はじめに-
著作「不格好経営」の一言めに書かれている言葉です。自分はこの言葉に深く共感して、本を即買いしました。
5年前に理解の出来なかったことが理解できるようになったり、1年前の自分のドヤ発言を思い出して「ぎゃぁぁぁぁぁwwwwwはずかちーwwwww」などと感じたりする瞬間に、あぁ自分は変わったのだなとしみじみ感じる。
これが成長なのか後退なのかは正直わかりません。出来ることが増える一方、できないことも増えるという現実があるわけですからね・・・
マッキンゼー&カンパニー出身の超エリート
マッキンゼーといえば、経営コンサル界のスーパーエリート集団が揃い、その卒業生は実業界で多大な影響力を持ってることで有名。
King 0f 激務としても有名で、南場氏は当時の労働環境についてこう語っています。
4時、5時の帰宅は当たり前。平日の睡眠時間は2、3時間。寝不足で日中は抜け殻状態になってしまい、頭が冴えはじめるのは夜中1時。結局朝帰りのパターンが続き、毎日出勤前に「こんな会社やめてやる」と言いながらシャワーを浴びるようになった。
後に、マッキンゼーでのキャリアを捨てて、DeNAを創業をするわけですが、彼女のとんでもない発言がとても印象的。
「ここで学んだスキルは会社経営に直接役立たなかった。」
そして、コンサル時代に、クライアントの経営者に対し、説法を垂れていた自分をぶん殴りたいそうで。
一見、コンサルで的確なアドバイスのできる人間は経営でもその手腕を大いに発揮できそうに思えますが、現実はそう甘くなく、そのギャップはとてつもなく大きいそうです。
南場氏が感じたこの感覚は、同じ事柄でも主観と客観で見え方が異なることに端を発するのではないかなと思います。
南場氏も言うとおり、コンサルの世界において必要な能力は、論理的思考であって、ロジカルというのは客観の最たるものです。
ロジックとは誰もがみて「あぁなるほどね。」と感じることなわけですから。
一方で、主観というのはどちらかというと、”感覚的”で、直感とか感情もこの部類に入ります。
まぁなんと言いますか、打撃理論を熟知した人間が必ずしも名バッターとは限りませんから。
コンサル時代は、理論を偉そうに語っていた。でも、いざ自分が会社経営というバッターボックスに立ってみると全然思うようにボールを捉えられんやんけ!ってことではないかなと思います。
人を大切にする。
「不格好経営」を読んで、この人は本当に仲間を大切にするのだなと感心させられます。
「今のDeNAがあるのはみんなのおかげ。」
という思いが、物語の随所から読み取れます。
経営者が書く本というのは、往々にして自分の自慢話が多いのですが、彼女の著作には頻繁に仲間との絡みやその思いが綴られています。
NHKの「プロフェッショナルの条件」にて、努力の甲斐も実らず、社内企画コンテストに敗れた社員のモチベーションをくじかないために、すぐさまフォローに入った姿がとっても印象的。
また、組織づくりにもこだわりを持っていて、社員間にヒエラルキーをつくらないそう。その理由は、ヒエラルキーに囚われ、上級者におもねるような発言をしていては、良いものが生まれないからだそうで、フラットの関係づくりを心がけているとのこと。
「プロフェッショナルの条件」の社員との会話シーンでは「これやばくない!?」「ちょーいいと思わない!?」など、女子高生のような口ぶりで社員に接する姿がよく見られ、壁をつくらないための南場氏なりのコミュニケーションで、見ているこっちがほっこりさせられました。
人材の質に一切の妥協はしない。
一緒に仕事がしたい!と思った人材は、地球の裏側まで追いかけるそうです。
創業期から一貫して多大な時間とエネルギーを採用活動にあて、DeNAの競争力の源泉は「人材の質」と断言している。
人材の質を最高レベルに保つためには
- 最高の人材を採用し
- その人材が育ち、実力をつけ
- 実力のある人材が埋もれずにステージに乗って輝き
- だからやめない。
という要素を満たすことだと著書内で書いている。
年30回の新採用説明にも、御自ら赴き、採用には一切の妥協をしないそうです。
人間は仕事によって成長する。
人は、人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。
南場氏はこう言い切ります。
人間の成長曲線は、右肩上がりではなく、階段型であり、成長を感じることのできない苦しい時期があるという。
この停滞期は、自信をつけることによって打破することが出来、その成長を促すためには、能力の限界ギリギリの仕事を任せることがとても重要と考えているとのことです。
確かに能力ギリギリの仕事を任せると失敗のリスクはある。でも、そんなミスを恐れて、人材が育たないリスク(挑戦させない)を取る方が、会社としてはマイナスである。と。
繰り返しになるが、やはりこの”人材重視”の考え方がDeNAを支える鍵なのです。
最後に
とにかくチャーミングで、気さくな印象を受けますが、決して軽いわけではなく、その随所に責任感の強さ、芯の強さを感じます。
だから「僕は、南場智子が好きだ。」
DeNAという大企業を一代でつくりあげた人間なのだから、その能力というのは凄まじいはずです。
なのに決して気取る様子もなく、DeNAの創業者と知らなかったら近所に居る気さくなおばちゃんと言われても違和感ありません。
南場氏は、仲間が会社をここまでつくりあげた。と言いますが、その力の源泉というのは、社員たちが、南場氏の人間的な魅力に惹かれていることにあるのではないかと思います。
「この人のために、頑張ろう・・・」と。
南場氏はこんなことを聞いたら「客のために働け!」と一蹴するのでしょうが・・・