読書メモ

「しなやかな日本列島のつくりかた」を読んで思うコト

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著者は藻谷浩介氏。あの里山資本主義の著者としても大変有名です。

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髪型が若干、赤の女王に似ていますが、本の内容とは一切関係ありませんので、気にしないでください。

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本題に戻ります。この「しなやかな日本列島のつくりかた」は、著者と各分野のエキスパートとの対談を集録した作品で、計7エピソード収録されています。

  1. 「商店街」は起業家精神を取り戻せるか
  2. 「限界集落」と効率化の罠
  3. 「観光地」は脱・B級志向で強くなる
  4. 「農業」再生の鍵は技能にあり
  5. 「医療」は激増する高齢者に対応できるか
  6. 「赤字鉄道」はなぜ廃止してはいけないか
  7. 「ユーカリが丘」の奇跡

とまぁ、見事にテーマがバラバラですが、全編を通じて伝わってくるメッセージは「効率化ばかり追い求めたら間違った方向に進むで!」ということと「今ある物の価値を改めて考えてみぃや!」の2つです。

切り口が対談形式に変わっただけで、メッセージ性は「里山資本主義」とほぼ同じ。藻谷氏自身が地域活性化の専門家ですので、当たり前ですけども。

1.効率ばかり追い求めるとどうなるか?

効率の向上=善。このことに異論を唱えることのできる人間はどれほどいるでしょうか。効率向上は基本的には善です、でも、突き詰めてしまうと大切なものを失うことになりかねない。

ここでいう大切なものとは、いわゆるGDPに加算されない感覚的なもの。例えば「幸福度」もこの部類に入ります。

効率を突き詰めると「商店街」も「限界集落」も「赤字路線」も全て無くしていいことになります。はて、これって本当に国民の幸福度に直結するのでしょうか。

例えば限界集落。100人に聞いたら90人くらいは限界集落なんて消えるべき。と答えるんじゃないですかね。その大きな理由は「だって、存続させるためのコスト高くつくじゃん」。という感じでしょうか。

でも、出生率をあげたいなら、東京に人をぶちこむより、限界集落に分散した方が絶対に効果的ですよね。効率至上主義者が考える最も効率的な都市は間違いなく「東京」です。じゃあ、突き詰めて国民全員を東京送りにしたらどうなるでしょうか。

東京は出生率が低いので持続可能性がなくないですか。20年後を考えるならそれでいいのかもしれないけど、100年後を考えてみると絶対に良くない。大きな街では、東京に限らず出生率の低下傾向が見られることは周知の事実です。

そもそもオフィスにいなきゃできない仕事って減ってきてますよね。インターネットの普及でメールも出来るし、テレビ電話もできるじゃないですか?

働き方の形が変わりつつあるのに、環境の良い限界集落をぶっつぶすのは勿体ないと思います。僕は田舎と都会の両方に住んだ経験がありますが、精神衛生上、絶対「田舎の方が良い!」これは間違いない。

東京でパリピーするのが肌に合っている人も一定数いるでしょう。ですが、皆が望んでいる生活スタイルって、田舎暮らしだと思いますよ。その証拠に一生懸命、街中にみどり増やしたりしてるじゃないですか。あれって田舎への憧れだと僕は思って見てますけども。

理想の働き方って、職住一致じゃないかな。田舎に住みつつ都市型の仕事もできる。ってのが一番の贅沢だと思います。

効率に関連して住宅についても少し。効率のいい住宅ってなんだと思いますか?一言で高度利用なんですよ。要するにマンションとかビルみたいに建物を縦に伸ばすということです。同じ面積に多くの部屋をつくれるわけですから、効率良いですよね。でも、一般的に高度利用は都市計画法で制限されています。

なぜかわかります?日照の問題とか景観の問題が出てきて、住んでいる人の住み心地を悪化させるからです。

だから、本書内にもあるとおり「効率が悪いから切り捨てよう」という考えだけで行動してしまうと、本当に大切なものを失う可能性があるのです。

2.今あるものの価値を改めて考えてみる。

僕はなにも補助金漬けにしないと存続できないものを維持しろというわけではありません。無駄と言われているものが本当に無駄かを考えることが重要なのです。

例えば、「葉っぱビジネス」ってご存知ですか。上勝町という辺鄙な田舎がこのビジネスの舞台なのですが、上勝町は典型的な限界集落で活気がありませんでした。

しかし、今では多くの視察がくるなど、町おこしのモデルケースとしてメディアに取り上げられることも多くなりました。

この葉っぱビジネスは、元々ゴミとして廃棄されていた紅葉などの落ち葉を、日本料理店のつまものとして売ることで数億の利益をあげています。

その他にも真庭市という田舎町では、木質バイオマスを観光資源として活用しています。「えっ?エネルギーと観光?」と思われるかもしれませんが、当市ではバイオマス工場の施設見学などを通じてエネルギーを観光資源化しちゃってるのです。

限界集落に限らず、知恵を働かさなければ、潜在的に可能性を持つものを消滅させてしまうことになりかねないのです。だから、無駄だと思うものこそ、その価値を改めて考えることが重要だと思うのです。

3.「しなやかな日本列島のつくりかた」は既存の物にスポットライトをあててみよう!という前向きな気持ちにしてくれる。

効率化を突き詰めることの罠、そして既存のものの価値を改めてみることの重要性を教えてくれるのが本書です。

この本を読むと今までゴミに見えていたものが少しきらきらして見えるようになるんですよね。なんか有効活用できないかなぁ・・・なんて。

先ほども言いましたが、本当に無駄なものを延命させる必要はないですよ。でも、「本当にそれって無駄なの?」という問いを挟むことがとても重要。

その問いがあったからこそ、輝けているものがある。という例については、先ほど紹介させていただいたとおりです。

本書を読んで、今一度「切り捨てられようとしているものの価値」について考えてみませんか。

4.番外編-面白かったエピソード1-

ここからは「しなやかな日本列島のつくりかた」に収録されているエピソードについて、なるほどなぁと思ったものを紹介していきます。

一つ目は「観光地は脱・B級志向で強くなる」対談相手はスイスで観光事業を生業としている山田氏。スイスは小規模国家なのにも関わらず、観光で莫大な利益をあげています。

この人の話でとても納得させられたのは、B級グルメ云々の話ではなく、「魅力があれば新幹線の沿線だとかどうとか関係ないから!」というところですね。

立地至上主義で観光に取り組む姿勢がそもそも間違いであると。新幹線の誘致とかそんなものは二の次であって、大事なのはどれだけ街の魅力を高められるかどうかに懸かっていると山田氏は言います。

そうなんですよね。確かにアクセスを改善すれば一時的な集客は見込めるでしょう。でも持続性がない。観光の考え方って飲食店とほぼ同じだと自分は思っています。

例えば大型デパートの中にある飲食店ってあんまり美味しいものないじゃないですか。結局は立地という利にあぐらかいて、適当にやってるのでは・・・

本当に美味しい店って、よくわからないところにポツんとあったりしますよね。立地が悪くても味がいいから客足は絶えない。というより、まずかったら即潰れるので味を追求せざるを得ないというのが正確だと思います。

観光も全く同じで、魅力があれば(言うが易し行うは難しですが・・・)こっちからお願いしなくても、ほいほいと足を運んでくれると思います。現に立地の悪いスイスが賑わいまくっているわけですから・・

4.番外編-面白かったエピソード2-

最後は「農業再生の鍵は技能にあり」です。対談相手は農業経済学者の神門氏。この人の話で納得させられたのは農業は他の産業と同じく技能を磨くことが重要というところ。

農業と言えば「補助金漬け」の代名詞。とにかく国策で保護&保護が行われている産業です。神門氏は、そんな甘えた環境で農業をしていてはダメだと指摘します。

グローバル社会の今日、安価な海外食品が続々と日本に輸入されてくる中、生き延びるためには質で勝負しなくてはならない。そして質というのは、技能を高めることによって得ることができると。

日本の悪い傾向として、とにかく安い物こそ正義!みたいなところありませんか。でも、安価で叩き売ろうとするのって自分の農産物はそれくらいの価値しかありませんから(笑)と宣言してるようなもんだと思います。

質を求めて、良い物をつくれば高い値段でも十分売れると思いますよ。今や市場は国内に留まらず、世界ですから。海外には日本では想像できないような富裕層がゴロゴロといて、質の高い物にならボロボロ金を落としてくれます。

日本人は知的水準も高いので、本気で農業に取り組んだら最強だと思うんだけどなぁ・・・国土が縦に長くて気候もバラバラだから、いろんな種類の作物をつくることができると思います。これって凄い可能性だと思いませんか!?

僕はワクワクしちゃうくらいの可能性を秘めていると思います。

あるぱか

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